青い鳥の少女は仲間を見上げていた。内気なリズは美しい青い鳥の少女を閉じ込めていた。青い鳥の少女は閉じ込められることに満足していて、リズを愛していた。結局リズは現状を否定して、青い鳥の少女からの愛を突っ返して、ケージを開け放った。青い鳥は去った。
物語はこれでおしまい。さて、これでリズと青い鳥は一生のお別れなのだろうか?
断言しよう、青い鳥は舞い戻った。なぜならリズを愛していたから。
北宇治高校吹奏楽部のオーボエ奏者・みぞれはフルートソリスト・のぞみを愛していた。のぞみはみぞれを「何もないところ」から連れ出して、吹奏楽部という居場所を、楽器という長所を与えてくれたから。のぞみは友達が多い。でもみぞれにはのぞみ一人しかいない。どこの輪にも入れる人気者ののぞみは青い鳥のよう。あるときのぞみは断りもなく吹奏楽部をやめてしまって、みぞれはひとり、どうしていいかわからなくなった。結局のぞみは吹奏楽部に戻ってきて、二人は和解。みぞれのオーボエは歌声を取り戻した。
二人は高校三年生になった。進路希望調査に何も書けないでいるみぞれに、先生は音大を勧める。みぞれはのぞみが受けるなら、と音大を希望するようになった。が、のぞみはプロのフルート奏者になる覚悟はないのだった。自分が楽器をやめてしまったらみぞれが何もできなくなってしまう、そのことが恐ろしいから音大には行かないと言い出せない。吹っ切れたみぞれの演奏を聞いて、歴然の差があることを思い知ったのぞみ。今や青い鳥はみぞれで、リズはのぞみだった。どこまで羽ばたいていける演奏の力があるのに、みぞれはのぞみへの愛ゆえに、のぞみのそばを離れようとはしないのだった。滝のようなみぞれの言葉、のぞみの全てへの愛の告白に「みぞれのオーボエが好き」とだけ応える。愛しあっているだけではいられないこと、そして自分に翼があることを自覚したみぞれは、音大へ行くこと決める。普通大学を受験するのぞみとは別れることになる。でも二人はまた会える。会えるどころか、ずっと一緒でさえあるかもしれない。みぞれには翼があって、のぞみを愛しているから。
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