離婁上篇(大意)
詭弁派「男女は手を触れ合わないというのが礼儀よな」
孟子「せやで」
詭弁「なら兄嫁が水に落ちた時、弟が手を引っ張って救うのはどうや? 礼に背くんやろなぁ」
孟子「礼は常の規範なんやで。非常事態には礼にとらわれてはならぬこともあるんや」
礼は重要だが最高規範ではない、礼の規範が破れる場面がある、と言うのが孟子の主張である。
現代では男性が女性にAEDを使ってもいいか問題がある。孟子の立場に立てば、これは当然AEDを適切に用いて救命すべきである。そのために衣服を脱がせて良い。なぜなら救急救命は礼が支配しない場だから。
しかし当事者となった女性が同じように考えるかは不明。現状公共の場で他人に衣類を脱がされ、それにより苦痛を受けたなら、その者を糾弾するのはまた道理であるように思われる。
この糾弾は礼のように制限されるべきだろうか。これが制限されることで女性の権利は保護されるのだろうか、それとも狭まるのだろうか。
弟が手を出さねば水死は明白である。AED使用の有無は、水没しているかどうかほどはっきりした生死の分かれ目には見えないが、非常に重要である。AEDの使用を躊躇わせる要因を残すことは、人命が失われるリスクを増大させる。
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ここから頭でっかちでない話
AEDは躊躇わず使え ブラは外さなくていい 電極パッドの周りだけ避けろ
傷病者と自分が二人きりなら自分で使え
準備ができている(使う気でいる)女性がいるなら任せろ 自分は通報に回れ
近くに女性がいてもその人が躊躇っているようなら自分で使え 心室細動から1秒でも早く復帰することが重要である
その場合は布かなんか広げてもらって周囲の直接の視線から傷病者を守ってもらえ
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その他刺さる言葉
貧しきものは貨財を以て礼を為さず、老いたるものは筋力を以て礼を為さず
参考
竹内照夫『四書五経入門 中国思想の形成と展開』平凡社, 2000年, pp.97-98
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